*9月4日付け学長名による通知の求めに応じて9月11日に学術情報局研究推進
センターに提出した異議申立書。ただし、委員名は、A,B、Cなどと匿名化した。
3回に分けて連載する。(藤岡信勝記)
2019年(令和元年)9月11日
上智大学 学長 嘩道 佳明 殿
藤岡 信勝
〒112-0005東京都文京区水道2丁目6-3
新しい歴史教科書をつくる会気付け
異 議 申 立 書
(1)9月4日午前、貴職から「研究活動上の不正行為に係る調査について(調査の実施及び調査委員会委員の通知)」と題する文書を落手いたしました。私は、「上智大学における研究活動上の不正行為に係る調査の手続きに関する内規」(以下、「内規」と言う)第15条第2項に基づき、「調査委員会委員に関する異議」を申し立てます。
しかし、調査の内容(主題)に関しても重大な異議がありますので、併せて申し述べます。その理由は、調査の内容(主題)と調査委員会の委員に対する疑義が密接・不可分に関係しているからです。そこで、話の順序として、調査の内容(主題)に関する問題から先に述べることといたします。
(2)私は、上智大学を舞台にして、学術研究の名を騙って行われた一連の不正行為によって、自身の社会的名誉と信用を毀損される被害を受け、その被害は今現在も継続・拡大しております。事件の概要は、上智大学の大学院生の学術研究に私たちが研究対象者として協力したところ、その研究資料(インタビュー映像)を、私を一方的に攻撃し侮辱する内容の商業映画の作成に無断で利用され、全国で一般公開されているというものです。
その研究手続きは、研究協力者への権利侵害を未然に防ぐために大学が定めている研究着手条件に一切従わず、また、実際にも、必要な措置を全く履行しない形で実施されました。この研究上の不正行為によって、私は被害を未然に防ぐ機会を奪われました。
しかし、この不正行為は、単に貴学の元大学院生の暴走によって起こったというものではありません。その不正行為において、主たる実行犯である大学院生を指導する立場にあった指導教授自らが、着手段階から一貫してこの計画を企画・推進していた、いわば「共同正犯」であることが明らかになっているのです。
ですから、私たちの告発は、当然ながら元大学院生・出崎幹根のみならず、担当指導教授であった中野晃一氏をも対象としているのです。このことは、私が執筆し、市販雑誌に掲載された二つの文章のタイトル、すなわち、「慰安婦ドキュメント『主戦場』 デザキ監督の詐欺的手口」(『月刊Hanada』2019年8月号)と「『主戦場』指導教官中野晃一上智大学教授の責任」(『同誌』2019年9月号)からも明らかです。これらの文章は、貴学の側でも十分に承知されているはずです。
(3)私は、このように、この問題を社会一般に向けて発言しているだけでなく、貴学に対しても直接告発し、問題を提起して参りました。まず、4月27日、私は同じ被害者の藤木俊一、山本優美子とともに3名の連名で、不正行為が行われた上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の委員長あてに、問題の発生した経緯を説明するとともに、インタビューに訪れた3名の元大学院生と指導教授に関する質問状を送りました。ところが、委員長からはこれに対し、本人の文書による許可がなければ答えられないとの返信が送られてきました。これは、被害者が、加害者の所属機関に被害を訴えているのに、加害者の同意がなければ、機関として対応しないということです。あまりに不可解ゆえに、私たちは再度、念を押して質問しましたが、同じ返答が返ってきました。以上が第一段階です。
そこで、6月21日、私は上智大学の卒業生である山本優美子の協力のもとに、研究倫理上問題のある事案の告発窓口として「研究倫理に関するガイドライン」で定めている監査室に電話をし、窓口担当者に30分ほど説明をしました。そして、貴学の責任者の立場にある学長または研究倫理担当の副学長に説明するためのアポを求めました。その趣旨は、事態が悪化する前にこの件について、学問の府である大学にふさわしい主体的な判断によるけじめをつけてもらうことを期待したからです。
ところが、これに対する当方への返事は、学長・副学長との連絡がつかない、連絡はついたが検討中である、面会するかどうかも検討中だ、いつまでに結論を出すかは答えられないなどの全く誠意を疑われる対応に終始するものでした。なお、この時点までには、4月19日の参議院議員会館における中野晃一教授の講演で、同教授が出崎の担当教授であることを自ら名乗り出ていました。以上が第二段階です。
(4)上智大学当局において、事態の深刻さを理解する様子が全く見られないために、私たちは、やむなく、8月29日、内容証明郵便にて「通告書」を上智学院理事長並びに上智大学学長宛てに代理人経由で送付しました。これが第三段階で、この内容証明郵便による「通告書」の送付は、上記の第一段階と、第二段階の貴学の対応の結果として生じたもので、事態は一貫した一連の流れの中にあるものです。
従って、調査委員会は、その検討課題として、「通告書」の中で触れている研究不正について遺漏なく検証することが義務づけられています。また、調査委員会の人的構成も、「通告書」において告発している内容を踏まえて構成されなければなりません。
もしも、本調査委員会と「通告書」に直接の因果関係がないと主張されるのであれば、貴学は6月21日の告発電話の続きとして当方の事情聴取から始めなければならないはずです。私たちに告発の趣旨を説明させ、文書その他の証拠を受領する必要があります。「通告書」を調査委員会でとりあげないのであれば、私たちの告発のステートメントは完結しておらず、何を検討課題としてどのような人選をすべきなのかの起点が存在しなくなるからです。