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「主戦場」訴訟第2回口頭弁論報告(3)

原告 藤木俊一が読み上げた意見書

 私は、約30年会社経営をする傍ら、2006年より米国のジャーナリストであるトニー・マラーノ氏の動画に日本語字幕を付ける活動、同氏の日本での出版や新聞等への連載、講演活動、その他の活動に関する代理人、各国の公文書館等での歴史資料の調査、国際歴史論戦研究所にて歴史に関する研究をし、国連や国際会議等において、歪曲された日本に関する「歴史問題」や国内外の「人権」に関する問題を扱い、様々な媒体において発信している者です。

 2016年8月11日に、出崎幹根氏から一通の電子メールを受け取りました。そこには、1.彼が上智大学の大学院生である事、2.卒業の為に他の院生と共に「歴史論戦の国際化」という研究を行っている事、3.慰安婦問題に関して活動をしている各国の主な活動家に関して研究したい事、4.私とマラーノ氏へのインタビューができるか、などの内容が書かれていました。

 同年8月24日付けメールには、1.慰安婦問題は、西側の報道より複雑である事、2.慰安婦の実情は、西側の学者や活動家が伝えているほど酷くなかった事、3.慰安婦の強制性を示す証拠がない事、4.私に私の意見をユーチューブ上の視聴者や西側の学者に紹介するプラットフォームを提供する事、5.出崎氏自らが西側の主張に疑問を持っている事、6.学問として期待される一定の基準を満たしている必要があり学術研究として「倫理的」であり「公平」で、インタビュー対象者に対して「敬意を持つ」という責任がある事、などが書かれていました。商業映画化等の話は一切出ておらず、あくまでも「ユーチューブのプラットフォーム」の話のみでした。

 同年9月21日に、私は応じる条件として、私が話す内容を切り取り、歪曲、誇張されたりすると困るので、公開前に私に完成したものを見せるように要求しました。

 同日に返信があり、1.私の心配に関して完全に理解できる事、2.私の発言を歪曲するつもりがない事、3.真っ先に学術的に高い誠実さと中立公正性が要求される為、インタビュー対象者には最大限の敬意を払う事、4.できが良ければ、より多くの視聴者に見てもらう為に映画祭に出したり、公開したりする事もある、などが書かれていました。

 出崎氏は、ユーチューバーで、ユーチューブでのプラットフォームを提供するとの説明でしたので、私は出崎氏がより多くの人に見て貰う為の「公開」と言えば、当然、真っ先に「ユーチューブでの公開」と考えました。「商業公開」を匂わせるような文言もありませんでした。このメールには「承諾書」が添付されていました。

 この「承諾書」を見て、「販売」という言葉が初めて出てきた事を不思議に思いました。当初、強調していた「学術研究の為」などとは、一言も書かれていませんでした。「商業利用」であれば、インタビューを「無償」で受ける理由はありません。

 「承諾書」には、出崎氏の一方的な権利のみが記載されており、私の権利が守られるとは到底思えない内容でした。そこで、私は、私の条件を盛り込んだ「合意書」を作成し出崎氏に送りました。「商業目的」に関する部分は、意図して「合意書」から削除しました。

 そこには、私の発言の切り取り、文脈と離れた使い方をされたり、歪曲されて利用されている場合は、私がその映画の「公開を停止」する権利を持つ事を盛り込みましたが、出崎氏は、「私のインタビューの部分は、映画全体の中の主要な部分になると思うので、私の部分のみを削除すると、全体を作り直さなければならない」「代替条件として、私が懸念するような事があった場合は、私がこの映画に不満である事や、その他、私が希望する声明をこの映画の最後のクレジット欄に表示する事で納得して欲しい」との事で、この条件をのむ事にしました。

 「合意書」に関するやり取りは、2016年9月26日に行われ、同日に約2時間のインタビューを受けました。その後に、学生である彼らに頑張って卒業して欲しいとの思いで食事に連れて行きました。同日23時21分には、「寛大に時間を割いてくれてありがとう。また、夕食をご馳走して下さり、ありがとう」などの内容が書かれたメールが出崎氏より送られて来ました。

 その後、2年間、何の連絡もありませんでしたが、2018年9月30日に出崎氏よりメールが届きました。その内容は、1.10月7日に釜山国際映画祭で上映する事、2.タイトルは『主戦場』である事、3.出来上がった映画は、「漏洩」への懸念と「著作権」の問題で事前に見せられない事、4.釜山に来れば鑑賞券を手配するので映画が見られる、と書かれていました。

 「合意書」にある「事前に見せる」「不満があればフィルムのクレジット欄にその旨の声明を表示する」などが、全て反故にされた事がわかりました。

 このメールを受けて、同年10月2日に私は、学生である出崎氏が目標を立てて、その目標に達した事に対して、「映画の完成おめでとう」と書き、続けて、『あなたは、私と公開前に確認の為に私に見せる事に合意した事項を覚えていますか?』『以前に嫌な経験をしているので、私達にとって非常に重要な事です』と書いて送りました。

 合意書を平気で違反しているにもかかわらず、韓国での出崎氏へのメディアのインタビューで、私達に対して、「極右」や「歴史修正主義者」との「悪意あるレッテル貼り」を始めていた事に対して、憤りを感じました。

 2019年4月4日に外国人特派員協会で出崎氏の記者会見で初めて自分が出ている「主戦場」という映画を見て出崎氏の会見を聞きました。

 この会見で、「慰安婦は性奴隷ではなかった」とする私を含む言論人8名に対して、「慰安婦は性奴隷であった」という人達18人が出演している事や、最初に私達側を「リビジョニスト(歴史修正主義者)」「ディナイアリスト(歴史否定主義者)」とした上で、私達から先にインタビューを撮り、それを18人の反対側に論破させるという一方的な手法で作られ、それに対して、私達は一切、反論できないという極めて悪質な作りであった事がわかりました。しかし、映画の宣伝では「小気味よく反証し合い」などと見る人を騙す文言まで入っていました。

 映画の冒頭で、私を含む5人の写真を横に並べ、まるで凶悪事件の指名手配犯であるかのように「リビジョニスト」「ディナイアリスト」という大きな文字を被せ大写しになるシーンがありました。卒業制作の為に協力した私達に対して、この様な悪意ある事を映画内で行っていた事に驚愕しました。

 映画の冒頭に、私とマラーノ氏が著作権をもち、ユーチューブに投稿している動画2本が盗用され、宣伝用動画にも同様に1本が盗用されていました。

 出崎氏は、合意書を反故にした理由に「著作権」を上げていましたが、インタビューに協力した私達の著作権は無視し、商業映画内に無断で使用するという、欺瞞が明確になりました。

 私は、出崎氏に対してこの映画が悪意に満ちたものであり、合意に反しているので直ぐに公開を中止するようにメールで要求しましたが、そのメールを出崎氏が無視したと自らの記者会見で発言していました。

 この出崎氏よる盗用に関しては、マラーノ氏本人と、共同著作権者の私が、令和元年10月4日に、埼玉県警察熊谷警察署に刑事告訴をし、同日、同署によって受理されました。

 私は、「性善説」は日本の美しい文化の1つと考えていますが、出崎氏の極めて不誠実で、悪意に満ちた行為が発覚した為に、裁判を起こす事にいたしました。日本、韓国、米国、欧州などでこの映画は上映され続けており、私の権利や人権、尊厳は、取り返しが付かないまでに損なわれています。さらに、私のこれまでの調査や活動に対する評価を著しく低下させるものであり、日々、精神的に非常に大きなストレスを感じ続けています。本件は、急を要するものです。即座に上映を中止させる判断を裁判官にお願いするものであります。

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