3 質問・要請事項
従前の経緯の概略は、前項記載のとおりでありますが、小職らは、貴職らに対し、以下のとおり質問・要請いたします。
すなわち、
(1)本件映画の製作に携わった出崎幹根、大学院生岡本明子、同オブリー・シリブィの3名の在学期間と修士課程卒業年次並びに修了研究(「卒業制作」)のテーマ、概要、課程修了の可否、評点をご教示ください。
(2)修了研究の聞き取り調査として作成されたインタビュー素材を、研究協力者に事前に知らせることなく商業映画に転用した出崎の行為について、貴学・貴職らは何ら問題ないとお考えですか。見解をお聞かせください。また問題ないとされる場合には、今後も同様の事態が貴学の学術研究の下で生じても、問題はないと認識されますか。
(3)出崎の修了研究は、研究対象者への聞き取り調査を中心に構成されており「人を対象とする研究」に該当します。
貴学が定める「人を対象とする研究」に関するチェックシートでは、24の項目について、<yes‐no>で答えるようになっていますが、そのうち一つでもyesがあれば、委員会による審査の対象となり得るとされています。今回のケースでは、以下の各項目につき、Yesとなり、明らかに審査を受ける研究に該当すると考えられます(番号はチェックシートの番号)。[*従って、番号はとぶことがある]
◇
<1>試料・情報・データ等の収集
(1)侵襲・危険性
①研究対象者が何らかの身体的または精神的な負担、不快、苦痛あるいは危険性を伴う可能性がある。yes
②研究対象者となることで、研究対象者個人や集団が差別を受けたり、経済状況や雇用・職業上の関係、私的な関係や財産等に損害を与える危険性がある等、研究対象者に不利益が生じる可能性がある。yes
(3)情報・データ等収集の手法
① 実験、調査の正確性を期すなど、研究遂行上の止むを得ない理由により、研究対象者に真の研究目的を知らせることができない。yes
(4)研究対象者・研究対象者との関係
③ 研究対象者や、研究対象者の関係者との間に、利益相反関係がある。(例えば教師、同僚、雇用主、親族等、当該研究の実施、協力以外に何らかの力関係や血縁関係等がある。) yes
<2>情報・データ等の分析
(1)プライバシー
① 個人が特定される情報・データ等に基づき、分析活動を行う。 yes
<3>試料・情報・データ等の管理(保管・廃棄)
(2)試料・情報・データ等の廃棄時期・方法
② 収集した試料・情報・データ等の全部または一部につき、検証や将来の研究利用または他機関への提供等研究遂行上の理由により、当該研究終了後も廃棄しない予定である。yes
<4>情報・データ等の公表
(1)結果の公表
① 研究・調査結果の公表の際に、研究対象者個人や特定の集団が不利益、不快感を被る可能性がる。yes
② 研究遂行上の止むを得ない理由により、研究・調査結果の公表の際に、研究対象者に公表内容の全てを開示できない。yes
(2)プライバシー
① 研究・調査結果の公表の際に、個人が特定される可能性がある。yes
◇
上記各項への判定(yes)につき、以下補足説明をします。次のとおりです。
<1>
(1)①については、現実に上記の 苦痛を感じた者がおり、被害をアピールし訴訟にまで及んでいるのですから、明らかです。
(1)②については、出演者が学術上の手法とは全く関係のないレッテル貼りによって批判されており、研究協力者の社会的評価を貶めることは明らかです。
(3)①については、商業プロパガンダ映画への転用という、真の目的が秘匿されています。
(4)③については、同映画に指導教官である中野教授自身が出演しており、研究対象者との間に利益相反関係があり得ます。
<2>
(1)①については、修了研究中において本人が特定されていることは明らかです。
<3>
(2)②については、商業作品に転用されており、当該研究終了後も廃棄されていません。
<4>
(1)①については、プロパガンダ映画として公表されており、研究対象者個人が不利益、不快感を蒙っている。
(1)②については、研究対象者にプロパガンダ映画への転用という公表内容が開示されていません。
(2)①については、個人が名指しで公表されています。
以上、1 箇所でも該当すれば「人を対象とする研究」の審査を受ける理由となるところ、9箇所にも亘って該当しています。
貴学にお尋ねします。出崎の卒業研究は「人を対象とする研究」の事前審査を受けるべき研究と考えられますか。<yes> または<no> でご回答ください。
また、<no>である場合には、上記9項目について、いずれにおいても該当しない理由をご教示下さい。